視床下部過誤腫は、視床下部という脳の中心部近くにある構造物にくっついて発生する、先天性の奇形の一種です。
脳腫瘍ではなく奇形なので、腫瘍のように大きく成長して、周りの脳を圧迫したり、しみこんでいったりすることはありません。
視床下部過誤腫による症状は、「てんかん」と「思春期早発症」です。
てんかんは、「笑い発作」という、非常に珍しいタイプのてんかん発作を生じます。それだけでなく、病状の進行とともに、いろんなタイプのてんかん発作も生じることがあります。
てんかんを生じている場合、てんかん発作の他に、知的発達障害や、行動異常を生じることがあります。
思春期早発症は、通常思春期になってから生じる、第2次性徴が早く出てしまうことです。
視床下部過誤腫によるてんかんを特徴付けている、最も重要な発作症状です。
急に無理矢理笑わされるような笑いで、自分でコントロールできない異常な笑いを特徴としています。
詳しくは、「笑い発作」のページを参照してください。
視床下部過誤腫は非常に珍しい病気とされていますが、どのくらいの頻度かというと、日本でのデータは残念ながらありません。
よく使われるデータは、スウェーデンから発表されたものがありますが、
これによると,
有病率は、20万人に1人
と報告されています。
これは、あくまでも視床下部過誤腫によっててんかんを生じている患者さんの割合なので、思春期早発症だけの視床下部過誤腫とか、全く症状のない視床下部過誤腫は含んでいません。
これらを含めると、視床下部過誤腫を持つ人の割合は、もう少し多いかもしれません。
視床下部過誤腫は先天的にできるものです。
つまり、お母さんのおなかの中で、身体のつくりができあがる過程で、過誤腫もできます。
赤ちゃんのもとになる卵(受精卵)ができてから、30〜40日頃にできはじめるといわれています。
この頃は、ちょうど脳の形が少しずつ形作られていく段階で、まだ脳が大人のような形になっていない、かなり早い時期です。
そんな早い時期にできるので、脳は視床下部過誤腫と共に大人の形へ成長していくことになります。
なので、とても大きな視床下部過誤腫で、周りの脳を圧迫して、普通の脳腫瘍なら何か症状があってもおかしくないように見えるものでも、まったく脳の局所症状を起こさないということになります。
さて、その発生の原因というと、まだはっきりしたことはわかっていません。
しかし、少しずつその発生の原因となり得る遺伝子の異常が判明してきています。
視床下部過誤腫のほとんどは、突然変異で生じるので、両親には異常がない場合がほとんどです。
遺伝子異常が少しずつ判明してきていますが、その多くは突然変異によるもので、
両親から受け付いた異常で発生する例は、ごくわずかです。
遺伝の可能性のあるものは、視床下部過誤腫以外にもいろんな奇形を合併していることがあります。