視床下部過誤腫は、手術で到達することが難しい脳の深いところにあるため、1回の治療では発作が十分に抑えられないことはしばしばありました。
これは、定位温熱凝固術にも言えます。
他の治療法よりは少ないとはいえ、治療成績のページでも少し触れたように、3割弱の人が再手術を行っています。
しかし逆に言うと、定位温熱凝固術のメリットの一つは、再手術も同じように可能だと言うことです。
治療成績のところでもデータを挙げていますが、再手術によって笑い発作がなくなる確率が増えています。
再手術の効果があるということです。
1997年〜2020年までのデータでは、25.2%の再手術率でした。
ちなみに、1997年〜2016年までと、2017年〜2020年のデータを比べると、
再手術率は、28.1% vs 16.0% となっており、再手術率は少なくなっている傾向にあります。
再手術の適応となるのは、以下のような人たちとなります。
・定位温熱凝固術後に笑い発作が残っている。
・術後(3〜6ヶ月後くらい)のMRIで、視床下部過誤腫と視床下部の付着部が残っている。
頻度は少ないですが、治療後すぐの時点では発作が残っていたのに、後から発作がなくなるという人がいたり、
手術直後のMRIは、治療した部位が膨れているので、残っている付着部が判断しにくい、といった問題もあるため、
再手術の適応を判断するためには、少なくとも手術後3ヶ月以降がよいと考えています。
他の治療、例えば開頭手術や内視鏡手術、ガンマナイフなど、定位温熱凝固術以外の治療を受けて発作が残っている人も、上に述べたのと同じ適応条件で、定位温熱凝固術による再手術が可能です。
(他施設で定位温熱凝固術を行い、発作が残った患者さんに、再手術を行ったケースもありました。)
特に笑い発作が残っている場合、それらはきちんと治療されていないことがほとんどです。
もし治療後に笑い発作が残っていて、それが日常生活に影響があるようなら、再手術を考えた方がよいと思います。
特に、笑い発作だけならまだしも、笑い発作以外の発作を生じたり、知的発達障害や行動面の以上が残っている人は、早めに再手術を考えた方がよいと思います。
そうでないと、笑い発作以外の発作が治りにくくなったり、いつまでも発達遅延や行動異常で困ることになります。
他院で治療された場合、発作が残っているのに、これ以上の治療はないと放置されているケースもあります。もし笑い発作が残っているなら、担当の医師に問い合わせてみてください。
このように、他の治療後に笑い発作が残っている場合、中途半端に治療され、肝心の視床下部過誤腫と視床下部の付着部が残っていることがほとんどです。
また、ガンマナイフという特殊な放射線治療後に発作が残ったケースにおいても、大半は視床下部過誤腫の大部分が残っており、再手術のよい適応となると思っています。
このように、わずかに残った部分でも治療できることが、定位温熱凝固術の長所の一つでもあります。
ここには示していませんが、他の病院で、当院と同じような定位温熱凝固術を行っても笑い発作が残っていた症例もあり、これに対して当院で定位温熱凝固術による再手術を行い、発作が治まった例もあります。
他院で定位温熱凝固術を行ったとしても、不完全な治療であれば、再手術を行う価値はあると思います。
再手術の方法は、基本的に初回の手術と同じです。
ただ、凝固プローブを差し込む位置を少しずらしますので、頭蓋骨に開ける穴は、別の場所になります。
多くの場足は、少し隣くらいの位置にあけるので、最初の手術と同じ皮膚切開を使うか、もしくは少しだけ切開線を延長するくらいですみますが、
場合によっては、大きく延長したり、別の皮膚切開を行うことも、ごく稀にはあります。
他の手術を行った後の場合にも、
できるだけ以前の手術の痕を使って、できるだけ新しい傷ができないように配慮していますが、
さすがにどうにもならないこともありますので、その場合には定位温熱凝固術のやりやすさを優先します。